どうも、RyeChemです!
今回の記事では【有機化学専攻の学生の就職先・進路】を紹介していきます。
- 有機化学専攻の方または有機化学を専攻したい方
- 研究職になりたい方
- 製薬・農薬業界に入りたい方
私は学生時代には有機化学(低分子)を専攻し、現在は某大手化学メーカーで研究職として働いています。
就活時には様々な選択肢があり、熟慮した結果総合化学メーカー研究職の道を選びました。
さて、皆さんは将来の進路に関しては、不安または期待など様々な思いを抱えてることでしょう。
- 自分の将来就きたい仕事に、どの進路を選べば就けるのか。
- 今化学科で、有機・無機・物理・分析などの専攻科の選択の際にどれを選ぶべきか
- 有機化学専攻の場合、どのような進路があるのか。
今回は、『有機化学専攻の進路』に絞った、私の実体験を基に話を進めたいと思います。
Contents
在学中の化学系学生の進路選択
化学系の学科に所属する学生は、学部4年生(B4)からさらに細分化された専攻科の選択があります
化学系の専攻科には“有機化学”、“物理化学”、“無機化学”、“分析化学”等の分野に分かれて、専門性を高めます。
その中で、“有機化学”と言えば、「合成実験!ブラック研究室!」といったイメージが大多数の意見かと思います。
有機化学専攻科の特徴
有機化学専攻の中にも様々な分野が内包されていますが、大きな特徴と言えば…。
- 化合物の合成実験がメイン
- 低分子合成と高分子合成にさらに細分化
- 様々な分野へ携わることが可能など
有機化学系では研究室によってターゲットにしている分野が異なります。
例えば、生物に対する薬、農薬、素材、面白分子のような純粋な学問など。
特定の業界への就職を考える場合には、この研究室選びは非常に大切になります。
それを後述していきます。
有機化学専攻の学生の進路
有機化学専攻の学生は非常に多岐に渡る業界・業種への就職が可能です。
ポイント
なぜなら有機化学で生み出される成分や素材は身の回りの様々な製品に利用されているからです。
就活面で言えば、有機化学専攻の学生は就職に関して非常に恵まれている、でしょう。
- 製薬業界
- 農薬業界
- 総合化学メーカー
- 精密機器・電池・家電の完成品メーカー
- 飲料品・食品メーカー
- 香料・化粧品業界など
低分子と高分子分野の進路
有機化学には低分子と高分子の分野に大きく分かれます。
低分子と高分子では機能性に大きく違いがあり、適応される業界・市場が異なります。
低分子分野の特徴的な進路
低分子合成はアカデミックの研究では花形で、天然物の合成など著名な研究者が多くチャレンジしていますね。
ただし、企業が行う事業では低分子というのは結構限られた業界と言えます。
低分子分野の特徴的な進路と言えば、やはり製薬・農薬業界でしょう。
社会人になっても研究で低分子を扱っていきたい、という人は製薬か農薬業界へ就職することを勧めます。
総合化学メーカーやその他業界でも低分子合成を行っている所はありますが、高分子の方が強いです。
製薬・農薬業界以外では低分子のテーマに配属される可能性は少なくなります。
高分子分野の特徴的な進路
高分子分野は化学系企業の製品群の中に多く用いられています。
高分子は低分子よりも機能性を付与しやすく、素材として大きな強みを持ちます。
そのため、化学メーカーが注力するテーマの多くは高分子化学が占めます。
低分子のように構造が決まれば性質が決まるのではなく、高分子はユニットが同じでも架橋度・重合度・ユニット比など多くの変化をつけることができます。
低分子に比べ高分子はまだまだ未知の学問なので、企業にとっては新たな事業の機会が眠る分野と言えます。
各業界への就職するために必要なこと
製薬業界
製薬業界は有機化学専攻の進路の中でも、かなり特殊です。
製薬業界の研究職を志望して、化学科ひいては有機化学を専攻したorしたい学生も少なくはないでしょう。
製薬業界への就職ができれば、高給取りになれるイメージや、高度でカッコいいイメージもありますからね。
研究職になるためには
さて、製薬業界の研究職になるためにはいくつか条件を満たした方がなり易いです。
- 難関大学出身であること(旧帝、難関私大)
- 博士号を取得すること
- 研究室が製薬系の研究に携わっていること(低分子合成)
日本は、というか海外も同じく学歴が重んじられる社会です。
四季報をパラパラめくってみると分かりますが、基本的に大手企業には高学歴の学生が多く就職しています。
特に製薬業界ではその傾向(学歴社会)は強いです。
また、製薬業界の研究職では修士号より博士号取得者の割合の方が多いです。
製薬業界の研究職と言えば、最も有機合成の専門性を高めた分野の就職先と言えます。
なので、博士号取得まで至った方が内定の可能性は大きくなります。
また、専門性の高さが評価されるので、研究室の方向性との一致も非常に重要になります。
製薬分野の研究を行う研究室であれば、製薬会社との繋がりもあったりするので、研究室選びも大切です。
今では化学メーカーでもそうですが、化合物の探索には“マテリアルインフォマティクス(MI)”を利用することが増えてきてます。
研究員の知恵・知見による探索から機械学習による探索への効率化向上が図られています。
なので、MIの専門性を深めた化学工学系の学生の採用も見受けられます。
研究職以外なら
製薬会社の研究職以外であれば、院卒でも十分になることができます。
例えば、MR職ですね。
私の知人にも何人か製薬会社のMRに修士卒で内定を貰っていますね。
農薬業界
農薬業界も製薬業界と同じく、低分子合成研究を続けたい人にとっては選択肢の1つ。
農薬業界は製薬業界ほど厳しくはなく、有機合成専攻の修士卒でも十分に内定を貰うことが可能です。
私も低分子合成に携わっていたので、農薬業界も選択肢の1つでした。
農薬企業の大手1社から研究職として内定を頂きましたが、最終的には辞退しました。
(総合)化学メーカー
(総合)化学メーカーへの就職は化学系出身学生の多くの進路ではないでしょうか。
(総合)化学メーカーへは修士卒であれば研究職として採用されます。
学部卒でも研究職として採用するところもありますが、基本的には殆どが修士卒です。
基本的にはそれ以外の条件はなく、有機系の研究室のテーマがなんであれ採用にはあまり関係がありません。
知識的に修士でないと仕事が出来ないかと言われたらNOですが、慣例的に修士卒の採用が多いですね。
その他業界
その他業界に関しても、化学メーカー就職と同様のことが言えます。
研究職を目指すなら基本は修士卒、それ以外の事務や品質管理などの部署であれば学部卒でも可。
高分子分野の専攻の方は、低分子専攻の製薬・農薬業界への進路、のような特有の進路はありません。
しかし、化学メーカーその他では高分子の方が企業の事業には向いています。
そのため、携わるテーマが高分子分野だ、ということが多いように思います。
その点では高分子専攻の方が得かもしれませんね。
私の内定先
私は中堅大学の修士卒、有機化学専攻で低分子合成(特に業界のターゲットはなし)の研究室でした。
そんなステータスですが、製薬業界の研究職以外は凡そ内定を頂いてます。
製薬業界の研究職は博士号取得者向き、というのが分かっていたので鼻からエントリーすらする気になれませんでした。
私が頂いた内定先は農薬業界、総合化学メーカー、精密機器メーカー、香料メーカー、化粧品メーカーです。
有機化学専攻の修士卒はそれなりに就職の選択肢は幅広くあると理解して大丈夫かと思いますよ。