どうも、RyeChemです!
今回の記事では某化学メーカーに研究職として入社し、4年目に差し掛かった私のこれまでの仕事内容の遷移を公開していきます。
- 化学メーカー研究職志望の方
- 化学メーカーの仕事内容を知りたい方
- 就活の軸に仕事内容を重視している方
実際に、化学メーカー志望の方が研究職ってどんな仕事するんだろう?
研究職で部署異動やテーマ異動はどんな感じだろう?
っていうのはなかなか外側からでは把握することが出来ません。
私は某大手化学メーカーに入社し、4年目でありながら非常に多くの経験を積ませて頂きました。
テーマ異動推移
- プロセス研究
- 知財関係
- 改良研究
- 探索研究
研究のお仕事を基礎寄りの事から製造寄りの事まで幅広く携わってきた私がざっくり紹介していきます。
是非参考にして頂いて、就活や転職の基準に据えて頂ければと思います。
私が入社後の短い期間で様々なテーマを担当し、得た気づきは
『自分の引き出しにない新しい経験をする事がとても重要』である事。
恐らく多くの学生は自分の専攻するかなり限定された内容に固執し、就活の軸に『やりがい・専攻を活かす』を据えていると思います。
これは非常に勿体ないです。重視するべきは『やりがい・専攻を活かせる』などではないと断言します。
就活や転職で重視すべき事柄はコチラからどうぞ。
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さて、早速入社後からの実体験と仕事内容の遷移を公開していきます。
Contents
入社後配属されたのは専門外の高分子!?
学生時代に有機化学を専攻し、特に低分子を扱っていた私が最初に担当したのは高分子のテーマでした。
有機化学出身にとって“低分子”と“高分子”では大きな隔たりがあり、専攻が違えば未知の領域です。
低分子と高分子の違い
化学に疎い人たちにざっくり説明すると低分子と高分子化合物は分子量により住み分けがされています。
特に低分子は化合物の構造を自在に設計でき、精密に形作ることが出来ます。
身近なものでは医農薬分野に使用され、その有効成分の殆どは低分子化合物でできています。
逆に高分子は、分子量が膨大なため細部まで精密に設計する事が困難です。
そのため、平均化して構造や機能を捉える目線で見る。ミクロでなくマクロで考えるのが一般的です。
簡単に言えば…。
虫を見た時に「あっ、クモだ」とは思えど「これは〇〇という特徴があって〇色で〇〇だからチャスジハエトリだ!」
なんて多くの人は考えたりしませんよね。
それと同じく、高分子は結構漠然とした捉え方をします。
※アカデミックでは異なるかも知れませんが。
というか高分子は、今でも全てが明らかになっている訳ではないんですね。
そのように高分子は低分子ほど分かりやすくない反面、まだまだ魅力的な学問領域であり可能性を秘めています。
高分子は周りを見渡せば、機器のボディや金属表面の塗装、ビニール袋など様々な所で使用されていますよね。
低分子出身ではありますが、高分子の方が商品としての魅力は高く感じます。。。
限られた学問領域に固執するのは視野が狭い
お門違いの“高分子”という領域のテーマに放り込まれた私でしたが、大切な事に気づきます。
それは、『限られた学問領域に固執するのは視野が狭い』という事。
私が高分子のテーマに携わり、最初に実感したのは高分子の可能性の大きさです。
今まで低分子を扱い、高分子の事なんて少しも考えた事がありませんでした。
しかし、周りを見渡せば高分子製品ばかりで低分子にはない機能を付与できる存在。
インクや吸水性樹脂、接着剤に、素材として、様々な事業に展開できる高分子化合物。
一方低分子合成の花形は医農薬分野で、分野としては限られています。
低分子合成に携わりたいという思いがあったのですが、テーマ配属1ヶ月もしないうちに消え去りました。
今まで触れた事のない分野に触れ、視野が広がったのです。
そして、“学生時代にやりたかった”と考えてる事なんてその程度のちっぽけなモノなのです。
プロセス開発
高分子領域のテーマに配属になった私が着手した主な仕事はプロセス開発でした。
プロセス開発にはいくつかあるのですが、私がメインで行ったのはスケールアップ検討。
つまりラボスケールでざっくり処方が固まったある製品を実機(工場レベル)で生産する処方の確立。
ラボスケールでは無視できた問題が合成スケールが大きくなれば様々な問題が生じます。
それを解決するような処方に細かく変更するのが役割です。
ココがポイント
大事なのは製品の品質を一定に保ちつつ、トラブルが生じない安全かつ再現性の高い処方にする事。
なので反応温度が2℃変わったら…。とか攪拌速度が変わったら…。昇温スピード、反応時間が変わったら…。
なんてのを細かく検討しデータを蓄積するというめちゃくちゃ泥臭い仕事です。
でも、製造業である化学メーカーの研究の花形が恐らくプロセス開発でしょう。
ちょっとの改良で利益が〇億と変化するので、とてつもない貢献になります。
この仕事もまた学生時代に天然物合成や新規反応開発をやっていた私にとっては未知の領域でした。
ついには実験から離れ知財の仕事へ!?
学生は想像できないかも知れませんが、研究職でありながら知的財産関係の仕事をするというのは結構普通の事です。
学生にとっての周辺知識の調査は主に学術論文ですが、企業の場合には特許調査がメインとなります。
他社の技術を知るだけでなく、自社技術の侵害または自社が侵害する場合も兼ねてテーマに関する特許は熟知する必要があります。
私は半年ほど合成実験から離れ、知的財産関係をメインに仕事していた時期があります。
既に学生時代に望んでいた研究とはかけ離れた業務。
勿論、私も最初は「えっ?」と思いました。
ですが、着手してみるとそれなりにやりがいは感じるんですよね。
担当してた期間はたったの半年程度だったので、面白さの一部を知るに留まったとは思います。
知的財産関係の仕事に就いて良かったと思う点
- 漠然と特許に触れてた事がかなり明確になった。
ex)知財戦略や自社を取り巻く特許網の認識
- 自社開発品の特許取得のため、様々なパラメータを決定づける分析手法の知識拡張
- 特許出願までの流れや必要書類の知識
- 特許出願による報奨金と会社への貢献
結局の所、自分の専攻以外は食わず嫌いなんですよ。
何事も経験が大切だし、研究の仕事だけで限定しても実験するだけが研究ではないですから。
広い視野を持てる人材の方が貴重であり、様々な経験を通じなければ視野は広がりません。
何気に嬉しいのが特許出願による報奨金ですね。
特許出願に携われるテーマって探索研究か研究内の知財関係が私の企業ではメインなので限られるんですよね。
ただ知財関係に割り当てられただけで、プラスの給与を頂けるのはちょっと得した気分。
知財の次は改良研究へ
知的財産関係を半年間携わった後には改良研究へと羽ばたきました。
改良研究では既存製品の改良を行います。
ここでいう改良とは…。
- 製品の性能向上を図る
- 製品の性能を一部特化させる
- 製品の性能を少し落として大きなコストダウンを図る
とまあ、製品の全ての底上げを図るだけが改良ではありません。
取引先によって求める機能は違いますから、要望に対応できるよう様々なグレードがあって損はないんですね。
探索研究のように0から1を生み出す仕事ではないので、ある程度の性能のモノは取れてきます。
なので、絶望感はかなり薄いのが救いどころ。
スクリーニングで得た結果を再度実験に落とし込んで…。とPDCAを回すのは一緒。
改良研究の後は探索研究へと向かう
改良研究である程度の結果が出て、軌道に乗った所で探索研究へと人員が割かれました。
割と人員固定よりテーマの進捗によって流動的に人員配置される場合もあります。
化学メーカーというのは扱う製品の種類が半端ないですから、同じ研究所でも無数にテーマがあります。
そして辿り着いた探索研究。
元々私が入社時に「やりたい」と思っていたのは探索研究です。
面談の時に別に叶わなくてもいいけど…。程度の気持ちで軽く伝えたら速攻移してくれました。
まあ、タイミングも丁度良かっただけなのでしょうが。
探索研究は企業の研究の中では最もアカデミックに近い部分でしょう。
0から1を生み出す研究(正確に言えば自社技術の適応範囲で進めるので0ではない)なので自由な研究です。
定型が決まってない自由な発想、アイデアから新製品の基盤を生み出さねばなりません。
そのため、成果を挙げるという面ではかなり厳しい世界。
論文、特許、セミナーや書籍からヒントを得て、自社技術を組み込みひたすら試行錯誤。
今なお奮闘中です(笑)
入社3-4年で様々な経験を経て。
入社時点から同期の中でも結構担当テーマが変わり、新しきに触れた方だと思います。
プロセス開発、改良研究、探索研究、知的財産関係…。
研究職のお仕事を網羅的に遷移してきました。
ココがポイント
その中で感じた事は、『どの仕事も魅力があり面白い』という事。
望んだ仕事でなくとも確実に魅力、やりがいはあるはずなので結局は自分の姿勢次第です。
むしろ新しい領域に飛び込んで、自身の引き出しを増やせた方がきっと役立つ人材になれるし将来に活きます。
待遇や環境に大きく左右されるとは思いますが、前向きになれなければ大損。
ココに注意
恐らく仕事に対して前向きに取り組み、魅力を少しでも感じようと努力しない人間はどこまで行ってもツラい社会人人生だと思います。
働く期間は想像以上に長いので、人生を充実させるには仕事面も少なからず充実させなければなりませんね。