どうも、RyeChemです。
今回の記事は【企業研究の特徴と仕事の進め方】に関してです。
- 理系研究志望の方
- 研究・仕事について理解を深めたい方
- 大学と企業の研究の差異で入社後ギャップを感じたくない方
大学と企業では研究のベクトルが異なるため、研究が好きと言えどもギャップを感じる方が多いです。
今回の記事では、企業の研究の“特徴”・“進め方”に関して、現研究職が解説していきます。
Contents
企業の研究の特徴
企業の研究は主に以下“4つ”が特徴的です。
- 研究の第一目的は『利益の追求』
- テーマの取捨選択が重要
- スピード感がある
- 分業制で研究ステージが進む
各々の項目に関して説明していきます。
企業の研究は利益第一
学生の頃の研究理念と企業の研究理念は大きく異なります。
学生から社会人になり、企業に所属すれば物事の見方は180°変化します。
研究の目的
第一に、企業が前提とするのは『利益の追求』です。
ポイント
企業は慈善団体ではなく、利益を得てこそ“存続”し、“成長”し続けられるのです。
そのため、企業が行う研究の第一目的も『利益の追求』となります。
“企業”と“大学”の研究目的との差異
学生時代に行う研究は『学問の追求』です。
仮に高額の試薬や、調製が煩雑な触媒を用いようとも、真新しい新規反応を発見できれば大きな成果です。
“Cost effective”であることも、当然評価対象ではありますが、企業ほど厳格ではありません。
対して、企業では上述の通り『利益の追求』を第一目的としています。
高価な試薬を用いた反応を取り入れれば、製品の製造単価が上がり、コスト面での競争力を失うこととなります。
粗悪な安価品すらも製品としての需要があるほど、ビジネスにおいて“コスト”面の優位性は非常に脅威です。
大学と企業、この研究の目指すところの差は非常に大きいと言えます。
アカデミックの研究が好き、という方は企業の研究に多少違和感を感じることと思います。
テーマの取捨選択が大事
企業では利益の追求を第一目的とするため、テーマの取捨選択が非常に大事です。
自社保有技術で出来る範囲のテーマか
新規のテーマを探索するにあたり、基本的には自社保有技術との相乗効果を確認します。
多くの企業が、“金になるテーマ”を探している中で、新規テーマ着手にあたり優位性がなければ競争に負けてしまいます。
ポイント
自社保有技術をベースに、他社よりも速く、安く、良く、研究を進められるかが非常に重要です。
テーマのペンディングも迅速に判断
新規テーマに着手し、テーマ化された後でもペンディング(断念)することは往々にしてあります。
勿論、新規テーマに着手する段階で、十分に調査し上市まで順調に進めるのが理想です。
しかしながら、化学メーカーでは顧客評価の結果、自社の開発品が評価され、採用されなければなりません。
新規テーマで一定の需要が見込め、自社保有技術で対応可能として、開発品を生み出しても、採用されなければ無意味なのです。
開発品の性能は、顧客が評価する条件や組み合わせる素材などによって変化します。
つまり開発品単体の性能が非常に良くとも、相手先での評価が悪いということは多いです。
開発品を様々な顧客に売り込んだ結果、採用見込み数量が事業継続水準に達しなければ、ペンディングの選択肢が発生します。
利益につながる可能性が低い事業に、時間・コストを掛け続ける意味が企業にとっては薄いからです。
企業の研究スピードは速い
中堅化学メーカー以上ともなれば、基本的に海外売上比率を一定以上持つグローバル企業と言えます。
化学メーカーは日本市場にこだわる必要性が少なく、常に海外を視野に物事を判断します。
今後縮小する日本市場より海外市場でシェアを握る方が安泰かつ規模が段違いだからです。
海外市場を主戦場に熾烈な競争
グローバル企業は海外市場を主戦場として日々熾烈な開発競争を行います。
開発競争に勝つには『コスト』・『性能』に加えて『スピード』が非常に大切です。
上市された製品は基本的にモデルチェンジするまでに一定期間要します。
ポイント
裏を返せば、一度上市した製品の素材・パーツ等は簡単に変更が効かないことを意味します。
そのため、少しでも早く自社開発素材の顧客評価を受け、製品に組み込まれることが大切となります。
それにより、一定期間の安定的な需要が見込め、利益を得ることができます。
その中でも、次世代に向けた改良研究は日々継続し、継続した採用を目指すことになります。
そうして、顧客から信頼を勝ち取り、長期的な需要を手にするのです。
分業制で研究を進める
企業ではスピード感のある研究が非常に大切です。
そのスピードを加速させるために、企業では効率的な分業制で事業を推進します。
研究にも様々な種類がある
研究にも分業制が導入されています。
『新規探索』・『改良研究』・『工業化研究』等が企業の研究種別にあたります。
それぞれ、必要な知識が異なるため、基本的には分業制で行われます。
製品となりえる処方の開発を行えば、次は量産化に向けた処方開発を別チームが行うように。
ジョブローテーションによる知識・経験の習得
ジョブローテーションも研究間では比較的活発に行われています。
- 研究員のリソースを臨機応変に変動させることで、スピード感を維持する目的
- 他の研究ステージを知ることで、次ステージを想定した研究の実施による効率化
そのため、研究の中でも飽きることなくいろいろな業務に携わることも可能です。
研究は日々面白い発見の中にいるので、比較的マンネリ化しづらい職種であると言えます。
まとめ
企業の研究の特徴は以下“4つ”!
- 研究の第一目的は『利益の追求』
- テーマの取捨選択が重要
- スピード感がある
- 分業制で研究ステージが進む