こんばんわ、RyeChemです。
今回の記事は化学メーカーで現研究職として働く私が、研究職の仕事内容“7つ”を紹介します。
学生が想像する研究職の仕事と実際の業務には大きな隔たりがあります。
恐らく、多くの人が大学・大学院で行う研究のイメージを強く持っているのではないでしょうか。
勿論、実験業務は存在しますが、それだけではありません。
- 将来的に研究職を目指したい方
- 実験が好きで、将来的に携わりたい方
- 化学メーカー志望でどんな業務があるか知りたい方
研究職の業務に関して、知る機会は殆どありません。
私も学生時代・就活時に知りえた研究職に関する情報と、入社後の実態は大きく異なりました。
ここでは、企業で行われる研究業務に関して、深く理解していただければと思います。
研究職の役割
研究職とは、当然ながら企業で研究を行う人達の事を指します。
企業には様々な部門があり、各部門連携しながら、利益の追求を行います。
私は化学企業に勤めていますので、化学企業を例示して話をします。
研究職の主となる役割は、企業が売る製品自身、又はその核となるものを生み出す事です。
そして、その結果、会社に利益をもたらす事です。
研究職は、外部からのイメージでは…。
- 会社の仕事では実験業務が殆ど
- 実験の中でも素材開発のような探索研究が殆ど
のようなイメージが根強いことと思います。
でも実際には、企業の研究職というのは非常に幅広い業務内容(役割)を有しています。
一括りに“研究職”と言えども、様々な業務が内包されていることを次に説明していきます。
研究職が行う“研究の種類”
さて、本題の研究職が行う業務内容の紹介に移ります。
前述の通り、研究職は非常に幅広い業務内容を有し、複数のチーム分けがなされています。
仕事内容
- 新規探索
- 応用研究
- プロセス開発
- 評価・分析
- 用途開発
- 技術サービス
- 知的財産
おおよそ、上記7つが研究職の主な仕事となります。
これらを一人一人が全て担当するのは非効率ですので、それぞれチームに分かれて業務遂行を行っています。
それら全員の総称が研究職です。
それぞれの簡単な仕事内容の説明を行っていきます。
新規探索
新規探索はニーズ(=世の中の需要)とシーズ(=自社の技術)を鑑みて、これまで自社で扱わなかった素材を開拓する仕事です。
※ただ、市場調査に関しては別の部門と並行で進めていくことが多いです。
ポイント
研究職の新規探索チームは調査を元に、市場との適合度の高い素材を合成する目途を付けます。
もちろん情報収集のため、新規探索チームもセミナーや学会等に出向くことも良くあります。
出来るだけ最先端の、かつ最新の情報を仕入れ、将来伸びる市場に向けていち早く製品開発に着手します。
目途を付けるまでと言ったのは、新規探索チームが新規の素材を発見し、製造処方の確立まで担当する訳ではないからです。
「こんな感じの処方であれば、それなりの収率で開発品を作れるよ!」
と、ある程度のスクリーニングを終えて、暫定処方を作ってから次のチームに引き継ぐ事が多いです。
狙った市場に従来品を超えた製品を投入するのは非常に難しく、技術力と情報収集力、運が問われる仕事です。
ただ、自身の発見した製品が上市され、シェアを握った時は相当な達成感が得られるでしょう。
私はまだその快感を味わえたことはないです…。
応用研究
応用研究は、各社意味合いが違うかもしれませんが、私の会社では応用研究≒既存製品の改良研究という意味合いが強いです。
応用研究の意味合いは“2つ”あります。
- 既存製品のグレードアップ
- 既存製品の別グレード開発
既存製品のグレードアップ
これは、容易にイメージできると思います。
簡単なイメージで説明すると、iPhone7からiPhone10にするようなものです。
ポイント
BtoC企業が競合他社との製品開発競争によって、製品のグレードアップを目指すのと同様に、BtoB企業も自社製品の採用を求めて、優位性のある製品開発が求められています。
既存製品の売上が好調でも、いつ従来品を超える製品が競合他社から上市されるか分かりません。
そのため、各社は常に自社製品のグレードアップを目指した研究開発を行います。
製品のコンセプトは既に出来上がっているので、基本的には核は変えずに改良を進めます。
改良の壁に当たれば、根本的な変更が求められますが、その場合には探索研究寄りの難しさが待ち受けることとなります。
既存製品の別グレードの開発
既存製品の別グレードの開発は非常に大切です。
たとえば?
ある市場でシェアを握っている自社製品があるとしましょう。
様々な企業に自社製品が採用されていますが、A社からは性能低下は許容するのでコスト面の改善を求められたとします。
その際に、自社製品のラインナップが揃っていれば、要望に応えることが可能ですよね。
研究が成果に繋がるには、非常に膨大な時間を要することが殆どです。
顧客の要望を受けてから開発に取り組んでいては、競争に負ける可能性も大いにあるでしょう。
企業は注力する事業ではラインナップを揃え、顧客の様々な要望に応えられるよう、用意周到に進める必要があるのです。
プロセス開発
プロセス開発は新規探索や応用研究で出来上がった暫定処方を製造処方に組み上げる研究です。
暫定処方を最適化する
暫定処方はあくまで“暫定”であり、無駄が非常に多いため、製造処方へと最適化します。
- 製品コストの低減
- 収率の向上
- 工程のタイムサイクル改善
- 工程の省略など
ハンドリング性の改善等も一要素ですが、基本的には製品コストの低減に集約されます。
大量生産へはスケールアップ検討が必要
探索研究や応用研究はラボレベルでの実験で行われ、小実験(ラボスケール)と言われます。
対して、大量生産を行うには中実験(パイロットスケール)、実製造スケールまで引き上げる必要があります。
ラボスケールで組み上げられた処方をスケールアップすると、殆どの場合何かしらの問題が生じます。
- 再現性が取れない(製品品質のバラつきが大きくなる)
- 反応が制御できない(除熱が効かない等)
上記は一例ですが、これらの改善のため、より安定的な生産が可能な処方に組み替える必要があります。
製造への移管にはデータが足りない
製造現場へ処方を移管する際には、製造時にイレギュラーが起きた場合の事を考慮する必要があります。
たとえば?
製造時に反応温度が50℃で規定されている場合に52℃になってしまった、というケースです。
この場合に、製品に異常があるのか、ないのかを判断できれば、この後の工程を無駄にしなくていいですよね。
なので、製造処方を完成させた後に、どの工程はどのぐらいのブレを許容出来て、どの工程は厳密に管理しないといけないのかのデータを取得します。
また、その工程が品質にどう影響を与えるのかまでのデータを得ます。
これは、非常に時間がかかり、とても地味な仕事です。
何故なら、実験条件の一部を変更しての実験を実施し、取得物の分析・評価をひたすら繰り返します。
私も経験がありますが、なかなかに大変でしたし、心を無にして取り組んでいました。
ただ、実験をやればやるだけ、成果は確実上がるので安定した評価は受けられますよ!